古代の剣。それは、偶然クレーンが引き上げてしまった、楔の聖剣だろう。
そして失踪した女の子というのは、間違いなく仁菜だ。
(っていうか、一緒に失踪したの俺だし)
言いかけたけど、颯は黙って考える。
あの川に行ったからといって、どうやって異世界に帰る?
(素直に飛び込んだら、素直に帰れるのか?)
異世界とこっちの世界には多少の時間のずれがあるみたいだし、そううまくいくだろうか。
「……考えてたって、しょうがねえな」
イチかバチか、やってみるしかない。
あそこしか、異世界につながる……仁菜につながる道は、ないのだから。
颯がバイクのエンジンをかけると、シンゴが彼のヘルメットを投げて渡す。
それを受け取ってしっかり装着すると、颯はメンバーに手を振りながら、その場をあとにした。



