ヤンキー君と異世界に行く。【完】



「俺は、惚れた女を助けに行く」


バイクにまたがったまま、颯ははっきりと言った。


「お前たちのことも、チームのことも大事だ。

だけどあいつは、全然知らないところに、一人でいるんだ」


「総長……」


「危険な状況なんだ。

お前らには悪いけど、俺はあいつをこのまま放っておくことはできない!」


颯が言い切ると、工場に沈黙と緊張が走る。


やがて……。


「「「「シブイ……!」」」」


メンバーは声をそろえて、そう言った。


「総長、マジ渋いっす!

わかりました、総長が帰るまで、このシンゴが煉獄を預かりましょう!」


シンゴが自分の胸をドンとたたく。

勢いよくたたきすぎて、むせた。


「ところで総長、その姉さんはどこにいるんです?」


他のメンバーがたずねる。


「ああ……俺が流された川、あるだろ。

とりあえずあの辺を探しに行ってくるわ」


「えっ、あの川ですか」


メンバーは驚いた顔をする。


「何か問題があるのか?」


颯が尋ねると、メンバーはうなずく。


「総長がいなくなった日、川から古代の剣とか言うのが発見されて、大騒ぎだったんです。

それに女の子がカバンを残して失踪したのも同じ日で、あの辺はむやみに近づけないようになってるんすよ」