「……ごめんな、心配かけて」
颯はメンバーの背中を、順番にさすった。
「もうどこにも行かないでください、総長!」
「総長がいなくなってから、他のチームがこの辺を深夜に走るようになって……」
泣きながら訴えられる。
どうやら颯がいなくなったことを知って、他のチームが縄張りを荒らしに来ているらしい。
総長がいない煉獄はなめられっぱなしだと、シンゴまで涙ぐむ。
「そっか……そりゃいけねえな。
でも、無謀なケンカをするんじゃねえぞ。
俺がまた帰ってくるまで、耐えてくれ」
「って、総長?」
「俺は、行かなくちゃならない」
颯はそう言うと、バイクのカギをメンバーの一人から奪い、エンジンをかけようとする。
「ちょっと、総長!
帰ってきたばかりでどこへ?」
「俺たちを捨てていくんですか、総長~」
あたふたとバイクの前に出て、颯を止めようとするメンバーたち。
そんな彼らに、颯は大声で怒鳴った。
「ばかやろう!誰がお前たちを見捨てるって言った?
総長様をなめんじゃねえ!」
一喝すると、メンバーたちは黙り込む。
そして、潤んだ瞳で颯を見つめた。



