颯の自宅のすぐ裏は、家業の自動車整備工場になっている。
シンゴは『櫻井カーサービス』という看板が立つその駐車場に、バイクを止めた。
颯が工場の中へ入ると、何人かの高校生が、泣きながら颯の愛車を磨いていた。
彼らはみんな、煉獄のメンバーだ。
「……おいお前ら、何してんだ」
颯が声をかけると、かれらは一斉にふりむく。
「総長!」
「もう退院したんすか!?」
なんで知ってるんだと思うと、シンゴが工場の横の事務所に張り紙がしてあるのを見つけた。
『息子が帰ったので迎えに行ってきます!
明日まで臨時休業(ごめんね。てへぺろ)』
と、母の字で書かれていた。
「さっき来たらそれを見つけて、総長のおじいさんに頼んでここを開けてもらったんです。
総長が帰ってくる前に、バイクをぴかぴかにしておこうと思って」
よく見ると、工場の端で颯のおじいちゃんがこくりこくりと椅子に座ってうたた寝をしていた。
「でも良かったっす、総長~」
「お帰りなさい、総長~」
「お、おお……」
颯はあっという間にチームの仲間に囲まれ、順番に熱い抱擁をされた。
これがニーナだったらなあ、と思ったが、そこは黙っておいた。



