そんな颯の視界が突然ぐらりと揺れる。


颯は道端でよろけて、アスファルトにひざをついた。


すぐ横は車道で、自動車がひっきりなしに行きかう。


「ああ、くそ……っ!」


嫌われているとしても、こんなところでぼんやりしているわけにはいかないのだ。


なのに、弱った体は言うことをきいてくれない。


おとなしく点滴を受けてから来るべきだっただろうか。


震えるひざをたたき、なんとか立ち上がろうとすると……。


パラリラパーリラーパーリーラー♪


聞きなれたコールが耳に入り、ぱっと顔を上げた。


「あれ、総長!?」


行き過ぎかけた一台のバイクはキキーッと急ブレーキをかけ、止まる。


「おお、シンゴじゃねーか!」

「総長!いつ帰ってきたんすか!?
みんな心配してたんですよ~!?」


シンゴと呼ばれた高校生は、バイクを路肩に止めて颯に駆け寄る。


彼は短い茶髪をした、颯のチーム『煉獄』のナンバー2だ。


「ちょっと異世界に行っててさぁ。
まぁいいや、ちょっと俺様の家まで乗っけてくれよ。
とにかく急いでるんだ」

「そりゃ、総長のためなら喜んで!」


シンゴは颯に肩を貸し、ヘルメットまで貸してくれた。


それはシンゴの彼女用のもので、ピンク地にハイビスカスの絵がプリントされていた。