「やっべ、だっせぇ!」
守ると言っておきながら、仁菜を置いてきてしまった。
颯は心配する両親の前で、ナースコールをカチカチカチカチと連打する。
すると迷惑そうな顔で、看護師がやってきた。
「櫻井さん、ナースコールはコントローラーじゃないんですから。
連打しないでください」
「んなこたどうでもいいんだよ!
早くこれ、抜いてくれ!」
颯が点滴の針を指さすと、看護師はため息をつく。
めんどくさい患者に当たってしまったなあという顔だ。
「はい、終わるころまた来ますから」
華麗にスルーしようとする。
「ちょっ、もう良いって!俺、超バリバリ元気だし!」
「……お手洗いなら、刺したまま行っていいですから」
「うううう、ああああっ!めんどくせー!」
颯は腕に止められていたテープをはがし、勢いよく針を抜いた。
「いって!」
「あーあ。中で漏れたからですよー」
呆れ顔の看護師を無視し、颯は母の足元の紙袋をあさる。
そこからは期待した通り、新品のジャージが出てきた。
「おかん、くつは!?」
履物がないと、外へ出ていけない。
そんな颯の手に当たったのは、ヤンキーにはなじみの深い、サンダルだった。



