ヤンキー君と異世界に行く。【完】



「契約……って?」


アホの颯の代わりに、仁菜がラスに質問する。


「そんな怖い顔しないで、ニーナ。
可愛い顔が、台無しだよ?」


ラスは立ったまま、にこりと笑う。

気づけば、他の人間もみんな立ち上がっていた。


「大昔からの伝説に従って、ハヤテには勇者となって、この国を救ってもらう。僕たちと一緒にね」


「国を救う?
ムリですよ!颯はご覧のとおり、おバカなんです!
ヤンキーが異世界を救えるわけ、ないじゃないですか!」


「こら待て、誰がバカだ」


「あんたに決まってるでしょ!
ちょっと黙ってて!」


仁菜に怒鳴られた颯はショックを受け、床にかがんでのの字を書き始めた。


「えー。でも、【総長】なんでしょ?
大丈夫だよ、きっと。
ちょっと行って【木の実】を取ってくるだけなんだから」


ラスが軽い調子で言うのを、シリウスが引き継ぐ。


「……契約したあとでなんだが、この国が……いや、この世界がどういう状況か、説明させていただこう」


彼が席に着くと、周りの者も座りなおす。


仁菜と颯もラスにうながされ、再び席に着いた。


ラスはシリウスの傍らに寄り添う。