ヤンキー君と異世界に行く。【完】



「……ってぇ……テメエ、いきなり何すんだよ!」


颯は自分の手首を見る。
そこにはいばらがぐるりと輪を書いたような模様があった。
その中には、仁菜も見たことのない紋章。


「……お……?」


颯の顔色が変わる。
もう痛みは感じないようだった。
それでも心配な仁菜は、力を弱めたラスを振り切り、颯に駆け寄る。


「颯、大丈夫!?」


「おー、大丈夫大丈夫!
それよりコレ見ろよ。シブくね?」


「……は?」


「タトゥーは入れるつもりなかったんだけどな。
風呂屋に入れなくなるじゃん?
けど、やっぱりシブいなあ!帰ったらチームのやつらに見せびらかそーっと!」


──がくーっ。


仁菜は床にへたりこんだ。


(し、心配して損した……!)


しかも、『渋い』を『カッコイイ』って意味だと思ってる。


やっぱりおバカな颯は、いきなり手首におかしなアザをつけられても、あっさり受け入れてしまった。


「……帰れないよ」


くすり、と背後で笑い声が聞こえ、2人はそちらを振り返る。


そこには、笑顔のラスがいた。


「それは契約の刺青だからね。
契約完了まで、元の世界には帰れないよ」


その言葉は、2人の上に重く響いた。