ヤンキー君と異世界に行く。【完】



カフカが地を蹴る。


「ラス様!」


魔獣から斧を抜いていたアレクが叫ぶ。
ラスが振り向く。


「その剣じゃ、俺の剣は防げないぜ!」


カフカが飛びながら、ラスの頭上から漆黒の剣を振り下ろす。


ラスは飛びのき、その一撃を避けた。


そして敵ががら空きになったところを、カミーユが横から弓で狙う。


──ビュッ!!


完全にカフカの横顔をとらえたと思ったそれは、その灰色の目を貫く直前で、ぽとりと砂に落ちた。


「そんな……!」


カフカは至近距離から放たれた矢を、刀の柄で破壊したのだ。


「……邪魔すんじゃねえよ、弱いくせに!」


怒鳴ると、カフカはカミーユに向かって走る。


その間に、誰かが割って入った。


「俺が相手だ!」


アレクだ。


仲間の中で一番戦闘に長けているアレクの出現に、カフカは一瞬足を止めた。


もう油断をしていないアレクは、大斧をカフカに向かってなぎ払う。


それを片手の剣で受けるカフカ。


鋼がぶつかり合う音が響く。


右へ、左へと、何度も打ち付ける。


そのたびに火花が飛ぶのが仁菜の目に見えた。


二人の戦いを横目で見つつ、残った魔獣を処理する仲間たち。