ヤンキー君と異世界に行く。【完】



「あーあ、魔王様のペットをこんなに殺して……お前ら、やってくれたな」


背中がぞくりとあわだつ。


そこにいたのは、長い髪のイケメン魔族、カフカだった。


颯が切り落とした手首はそのままで、包帯のようなものが巻かれている。


「お前……!」


颯がうなる。


カフカの登場で、また一同がどよめいた。


「魔獣をほとんど倒したところなのに……!」


ラスが肩で息をしながら、カフカを見つめる。


魔獣は彼にひれ伏すように大人しくなり、命令を待って動きを止めている。


「おお、やっぱりいたな。
金髪王子に、俺の手を切り落とした人間」


カフカはにやりと笑う。


するとラスを守るように、カミーユとアレクがその前に立った。


「こっちの領土に入ってこようとするのなら、本気で容赦しねえぜ」


カフカが言うと、ラスが声を張り上げる。


「じゃあ、入らないから、風の樹の実をちょうだい!

ついでに、『神の涙』も返して!

あれを持っていかなきゃ、俺、おうちに帰れないんだ!

ねっ、お願い!」


両手を組んで、小首を傾げる。


その顔は、捨てられた子犬をほうふつとさせた。


(ラス……!この期におよんで、まだ『可愛いお願い攻撃』がきくと思ってる……!)


いや、実際可愛いけど、魔族にそのお願いはムリでしょう。