ヤンキー君と異世界に行く。【完】



「へー、すごいじゃん!若いのに!」


ラスが初めて、颯を見直したような顔をした。


「では、何の心配もないな」


アレクがほっとしたようにため息をつく。


(……ん?『心配』って……?)


仁菜が疑問に思うと、シリウスが話を続ける。


「ということは、腕に自信がある、と」


「まあ、そういうことだな」


「誰にも負ける気はしない、と」


「もちろん!」


ふんぞり返りすぎて後ろに転びそう……。
そんな颯に、シリウスは笑顔で手を差し出した。


それは今まで仁菜が見たことのない、黒より黒い、笑顔だった。


「では頼んだぞ、勇者殿!」


差し出された手をがしりとつかむ颯。


「おうよ、任せとけ!!って……なにを?」


「引き受ける前に聞くんだよ、そういうことはっ!!」


もう辛抱たまらず、仁菜が声をはりあげる。


彼女の胸にはいつからか、嫌な予感が渦を巻いていた。


その嫌な予感が的中したかのように……シリウスがにやりと、口の片端だけを吊り上げて笑う。