ヤンキー君と異世界に行く。【完】



(……あ、アホーっ!!)


仁菜は呆れて声を失った。


去年、近所の公園で、日曜の昼にやっていた集会を、仁菜は見たことがある。


様々な特攻服を着たヤンキー20人くらいが、順番に口上を述べていた。


その一番前でふんぞりかえっていたのは、もちろん颯。


(たった20人くらいのチームの総長でふんぞりかえるって……)


寒気がした仁菜は、ヤンキーたちに見つからないようにそっと家に帰り、警察に通報した。


しかし警察は、昼間に仲良くやっているなら、と相手にしてくれなかった。


たしかに颯のチーム『煉獄』は爆音は鳴らすけど、夜中は走らないし、交通ルールは守るし、シンナー吸ってる様子もなく、薬物を手に入れるツテもない。


彼らに女の子が襲われたとかって話も、ない。


たまにどこかのチームと抗争が起きたときだけ、彼らは豹変するらしいと、中学のとき誰かが言ってた。


「…………」


さて、思考は現在に戻る。


颯の気合の入った自己紹介に、全員が固まっていた。


最初に口を開いたのは、冷静なシリウス。


「……総長、ということは、軍隊の隊長だったのか?」


「うん、そんなようなモンだな」


ウソつけいっ!
田舎ヤンキーの総長じゃん!
お山の大将っていうんだよ、それ!


仁菜はツッコミたかったが、話がややこしくなるのを恐れ、黙っていた。