カミーユについていった颯は、見たこともない装置で次々に転移された重症患者たちのベッドを整頓して並べる手伝いをした。
地下の研究室は思ったより広く、余ったスペースに砂漠の民たちが身を寄せ合っていた。
その中には少しだけど女性と子供の顔も見える。
彼らは少し不安がっているようだった。
いきなり今夜出発するからついてこいと言われても、なかなか納得できないらしい。
「残りたい者はここへ残っても構いませんが、ラス様が出発してしまう以上、ここでの安全は保障しかねます。
なんとか一緒に来ていただきたい」
カミーユが言うと、長老が反論する。
「それでは、わしらを徴兵するということか?
やっぱりランドミルの人間のいうことは信じられんわ」
「初めからそのつもりだったわけではありません。
でも今は事情が変わってしまって……」
「じゃから、その事情を、詳しく説明せいと言っておるのじゃ!」
「…だから、今は言えないって言っているでしょう!」
さすがのカミーユも、声を荒げる。
そんななか、アレクが研究室に入ってきた。
「どうした?」
「どうしたもこうしたも……僕たちがわからないことをこの人たちに説明しようって言う方が無理です」
「お前らしくない」
アレクがため息をつくと、カミーユも肩を落とした。
自分で思っているより動揺していて、うまい言い訳も思いつかなかったことに、今さら気づくカミーユ。
まだ修行が足りないな、と二人は思う。



