ヤンキー君と異世界に行く。【完】



カミーユが言うと、ラスが顔を上げる。


「なんだって……?」

「シリウスは、夜になるまであの部屋に近づくな、夕暮れとともに出発しろと、僕たちに言いました。

もしかしたら……」


カミーユはそこまで言って、口を閉ざした。


「もしかしたら……なに?」

「いえ……わかりません。日暮れ前に、もう一度あの部屋を訪ねてみましょう。

僕は、砂漠の民を集めます」


カミーユはそういうと、慌ただしく部屋を出ていった。


「俺も手伝う」


颯は少し遅れて、そのあとをついていく。


「……シリウスさんが、そんなことを?」


聞くと、アレクはうなずく。


「何かが起こっているのだとは思う。

だけど、なぜシリウスがあんな言い方をしたのかわからない」


もしラスが邪魔で、本気で仁菜を手に入れたいのなら、ラスを消そうと考えるだろう。


城から遠く離れろだなんて、言うだろうか?


「アレクさん……王妃様には、お会いできないんでしょうか?」

「えっ?」


仁菜の言葉に、アレクが驚いたように隻眼を見開く。


「ラスが行きたくないのなら、あたしが行きます。

王妃様に、シリウスさんと何があったのか聞いてみます」


自分でも驚くくらい、はっきりした声が出た。


そんな仁菜に、アレクはさとすように言う。