いつもひとりぼっちにされていた仁菜を誘い出してくれていたのは、颯だった。
颯はそんな時代のことを思い出したのか、眉をひそめる。
「信じてたひとが突然裏切ることだって、ある」
自分を救ってくれたヒーローは、今はヤンキーになった。
仁菜は素直に颯の顔を見られなくなった。
今だって、そう。
颯がどんな顔をしているか見たくなくて、ラスだけに向かう。
「だけど、シリウスさんは違うと思うの。
直前に、あたしに『ラス様を頼む』って、言ったんだもの」
あの言葉は、嘘じゃないと思う。
「だって、おかしいじゃないですか。
シリウスさんは、みなさんの予定を把握していたんですよね?
なのに……ラスの部屋で、みなさんが来るタイミングをはかったように、あたしにあんなことをするなんて」
まるで、見つけてほしかったみたいだ。
「そうですね……とにかく、彼が言っていたことが気になります。
砂漠の民を集め、怪我人は僕の地下研究室に隠しましょう。
そして、夕暮れに出られるように旅の準備をしなければ」



