アレクが謝ると、ラスは唇をかんでうつむいてしまった。
「ちょっと……待ってくれよ。俺たちにもわかるように話してくれねーかな。
なんでシリウスがラスの母親に会ってたことが異常事態なわけ?
ラスの世話役なんだから、その母親に話すことだって色々あんじゃねーの?」
颯が問うと、ラスが苛立たしげに答える。
「母親は俺のことを憎んでるんだよ!」
「え……はぁ……?」
さすがの颯も絶句する。
「今まで俺を育ててくれたのは、乳母とシリウスだ。
あの女は、俺に優しい言葉ひとつかけたことがない。
シリウスにもだ。
今まで一度だって、話しているところなんて見たことなかった……」
ラスは悲鳴のように一気に言葉を吐き出すと、頭を抱えてまたうつむいてしまった。
「たしかに俺も、そのように記憶している」
「そんな……実の親子だろ?
なんでそんなことになるわけ?」
颯は信じられないようで、目をぱちくりさせる。
黙っているラスに代わって、仁菜は口を開く。
「実の親子だって……仲がいいとは限らない。
親がみんな、子供のことを思っているわけじゃない。
颯は知っているはずでしょう?」



