ヤンキー君と異世界に行く。【完】



アレクの住居は、城から離れてすぐのところにあった。


その中は簡素なベッドと小さなテーブルに一つのイス以外無駄なものがなくて、すっきり……というか閑散としていた。


アレクはラスをイスに座らせると、仁菜に問いかける。


「ニーナ、シリウスとはいつからああいった関係に?」

「いつからって……何も関係ありませんから!」


仁菜は、あの場でシリウスが突然豹変してしまったことを話した。


「やはり、昨夜のことがなにか関係があるんだろうか?」


アレクがカミーユに聞くと、ラスが涙が止まった顔を上げる。


「昨夜って……なにかあったの?
二人とも、俺の部屋に来た時はなにも言ってなかったよね?」


二人の大人は顔を見合わせる。


そしてカミーユが、静かに語りだした。


「実は……シリウスが、王妃様のお部屋から出てくるのを、僕たちは見たんです」

「王妃様って……ラスのお母さんですか?」

「ああ」


仁菜が聞くと、アレクがうなずく。


「なんで……なんでシリウスが?」


ラスが聞くと、二人はため息をついた。


「さあ、それは僕たちもわかりません」

「その場で問いただすべきでした。すみません」