ヤンキー君と異世界に行く。【完】



「ラス……」


なんとか力になってあげたいけれど、なんとなぐさめていいのかわからない。


「ラス!ニーナ!」


背後から声がして、驚く。


仁菜が振り向くと、そこには仲間たちがいた。


「みんな……」


ラスは涙を見せないように、うつむいて目元をぬぐった。


「ラス様、ひとまず俺の住居に移りましょう。
ここでは目立ちすぎる」


アレクが自分の軍服を脱ぎ、ラスの頭からかぶせてやる。


「大丈夫。きっと、なにか理由があるんですよ」


カミーユがラスの肩をさすり、歩くようにうながす。


するとラスはこくりとうなずき、二人についていった。


(……みんな……)


よかった。ラスは一人じゃない。


(なんて素敵な人たちなんだろう)


ほっとため息をつくと、背中を叩かれた。


「俺たちも行くぞ」


「あ……うん」


颯は例のダサダサ特攻服ではなくて、ラスと色違いの黒い軍服を着ていた。


そうしていると、ヤンキーには見えなくて……。


仁菜はぶんぶんと首を横にふる。


そんなことを考えている場合じゃない。


「あの魔族のおかげで、俺の2万する特攻服が血まみれのボロボロになっちまった……ぜってぇ許さねえ」


仁菜の視線を感じたのか、颯は不機嫌そうにそう言った。