「まずここは、『ランドミル』という王国だ」
「……は?それってどこだ、ニーナ」
「さ、さあ?」
聞いたこともない国の名前に、とっさに世界地図を頭に浮かべた仁菜も答えられない。
「はあ?テメエ頭いいんだろーがよ。
わかんねーのかよ?」
「受験に出ない国は知らないよ!」
「なんだそれ。意味わかんねー」
すでに不機嫌になった颯に、白衣の男が「まあまあ」とスコーンをすすめた。
よく見ればそれは『スコーンらしきもの』であり、他の食べ物も全て、『それらしきもの』だった。
仁菜が日本で見慣れているものとは、微妙に色やニオイや、材質が違う。
「聞いたことがないのは当然だ。
ここは、お前たちの世界と表裏一体の別の世界だからな」
「……は?」
シリウスは白衣の男に視線を送る。
すると白衣の男は、懐からタブレット端末(らしきもの)を取り出した。
彼の細い指がそれを操作すると、その画面から光の粒子が放出され、仁菜と颯の前に、立体的な映像を組み立てた。
それは不勉強な颯でもよく知っている、青い星。地球だった。
「こっちがキミたちのいる世界ですよね」
2人はだまってうなずく。



