「……まあ、危機感を持つということは悪いことではないがな」


明らかに怒っている口調で、シリウスは仁菜から離れる。


するとテーブルの近くで、シリウスはふらりとよろけた。


(え……っ?)


シリウスは額を押さえてうずくまる。


「シリウスさん!大丈夫ですか?」

「ああ……気にするな。大丈夫だ」


とは言うけど、よく見れば顔色が悪い。


「シリウスさん、寝不足じゃないんですか?
みんな夜遅くまで走り回っていたみたいだし……」


そんななか、自分だけ寝てしまって申し訳ないと仁菜は反省した。


「どうぞ!あたしちゃんとここにいますから、寝てください、シリウスさん」


仁菜はさっきまで自分が寝ていたベッドをぽんぽんとたたく。


けれどシリウスは、首を横にふった。


「王子のベッドを使うわけにはいかない」


(……ごめんなさいね、しっかり使わせてもらって。
ふかふかで気持ちよかったですよ)


余計なことは言わず、話題を変える仁菜。


「そういえば、ラスは?いつも一緒なのに……」


聞くと、シリウスは椅子に座りながら答える。


「今日は用事があって、カミーユと一緒に行った」


どこに、と聞こうとしたけれど、やめた。


シリウスがすごく不機嫌に見えたから。


不機嫌というか、なんというか……