「じゅっぽん……」


「え?」


泣きながら颯は、仁菜から手を離す。


そして両手を広げて、頭の上に上げた。


「元の世界に帰ったら、うま○棒10本おごれよ」


う○い棒?


それって、あの真ん中に穴があいた、円筒形の駄菓子?


「そんなのでいいの?」


「うん。チーズ味とコーンポタージュ味は絶対入れてな」


「……もっといいもの、ねだっていいんだよ?
颯、こんな大けがしたんだもん……」


たぶん、颯の背中の傷跡は一生消えないだろうと、カミーユが言っていた。


普通の武器でついた傷なら、ランドミルの医学を駆使すれば、だいたいは綺麗になる。


だけどアレクの目の傷と同じように、精霊族や魔族の武器でついた傷は、なかなか消えないそうだ。


そこには思念や怨念が、入り込んでしまうから。


「ええ……思い浮かばねー……
俺、バカだからさ……」


「なんでもいいよ。
あたし、なんでもするよ」


「……え、マジ?」


突っ伏していた颯が、くるっと首をこちらに向けた。


「じゃあさ……」


「ちょ、ちょっと待って!えっちなことはナシだよ!?」



ものすごーく期待していたような顔の颯に、思わずそんな言葉が出た。