こっちの世界で目覚めたときに自分が寝かされていた部屋と同じ、無機質で殺風景な病室。
「颯……」
ランドミルに着いたのは、3日前。
颯が意識を取り戻したのは、昨日。
それまで、気が気じゃなかった。
颯はやっと意識を取り戻したと思ったら、病人食をがっつり食べて、またすぐ寝てしまった。
そして、今に至る。
(良かった……颯、早く元気になってね)
いつの間にか節くれだって、長くなっていた颯の指。
からむようにして、仁菜の小さな手が下になっている。
両手で颯の手を包むと、颯の眉がぴくりと揺れた。
ようやく目を開けた颯は、何度かまばたきする。
「おー、ニーナ。おはよう」
仁菜の姿を見た颯は、うつぶせのまま力なく笑う。
「おはよう。気分はどう……?
今までのこと、覚えてる?」
仁菜は少し緊張しながら、ゆっくり話す。
「あー、うん。
魔族に斬られたんだっけ」
「そうだよ……あたしを助けてくれたんだよ。
ありがとう、颯」
まさか、颯が盾になってくれるなんて思わなかった。
あのとき言ってくれた言葉が、ずっと仁菜の頭で響いてる。
『お前が自分をどう思おうと、俺はお前を守りたいんだ』
(あれは……、どういう気持ちで言ったの?)
幼なじみとして?旅の仲間として?それとも。
余計なことを考えて、頬が熱くなってしまった。
(颯があたしのことを女子として想ってくれてるんじゃないか……なんて、そんなわけないのに)



