『そもそも王も宝物をなでなでしてる時間なんかないから、ずっと放置だったんだよね。

だけど、まさか秘宝を奪われてたなんて。

じいさんも父さんも、マヌケだなあ』


ラスが呆れ顔でため息をつく。


『しかしなぜ、「神の涙」を盗んだんだ?

お前たちはその力を使おうとしなかったみたいじゃないか』


アレクが首をかしげる。


『神の涙』は、願いを叶えてくれる宝石。


それならば、反乱自体成功して、彼らがランドミルの王となっていたはず。


長老は自嘲気味に答えた。


『最近の若いもんは、なんも知らん。

「神の涙」は、あれに所持者の資格を認められなければ、力は使えぬのじゃ』


資格……それじゃまるで、宝石に意志があるみたいだ。


『そんなことはどうでもよかった。

ただわしは、大事なものをランドミルに奪われた。

だから、奪い返そうとあの宝石を盗んだだけじゃった……』


長老は顔をゆがめ、壊れた杖を床にたたきつけた。


『何を……奪われたんですか?』


仁菜が問う。


長老はそのシワだらけの顔を覆い、震える声で答えた。


『わしの子じゃ……わしの、3番目の子じゃ。

当時、妻の受精卵を無理やり技術者たちが奪っていった。

女の子になる可能性があるからといって……』