とろりと流れる、粘性をもった赤い、赤い……血。
『……っ』
『ニーナ、どうした?』
くるりと振り返った颯が、びっくりした顔をする。
『ど、どうした?どっか痛いのか?』
違うの。
ああ、どうしよう。
(まさか颯兄ちゃんといるときに、来ちゃうなんて……)
颯は仁菜の足元を見て、「あ」と一言言うと、顔を真っ赤にした。
どうやらおバカな颯も、気づいたらしい。
『おおお、お前、初めてか?』
『う、うん……』
初潮というものが、いつか自分の身に起こることを、仁菜は知っていた。
でも、どこか他人事のようにも感じていた。
なんの予兆もなく、それは訪れてしまった。
『大丈夫!心配すんな!』
颯は自分の黒いパーカーを脱ぐと、仁菜のデニムスカートを履いた腰に巻いた。
秋も中盤なのに、半袖になってしまった颯。
『女子が言ってた。みんな来るんだって。
初めはびっくりするけど、そのうち慣れるんだって。
そんな話、教室でするなっつうんだよ、なぁ』
颯はいつもと同じ笑顔に戻ると、仁菜の手を引いて歩き出す。
『今日はおとなしく帰るとすっか』
まだ日は高い。
まだ、颯と一緒にいたいのに。
仁菜は泣きそうになる。
『ごめんね……』
『大丈夫。俺バカだから、風邪ひかねーよ』



