「人のことかばってる暇はないんじゃねーの、おっさん」


その背後には、いつの間にか回り込んだカフカが。


瞬きする間にも、その巨大な黒い剣が二人に向かって振り下ろされた。


が……


「……あぁ?」


その刃は、二人の首を掻き切る前に、止まっていた。


ラスとシリウスを守るように、巨大な銀色のシールドがいつの間にかそこにあったからだ。


「あぁ?よく見たら……精霊の盾じゃん」


剣でそれを斬りつけたまま、カフカがゆっくりと首を回す。


その灰色の瞳にとらえられた仁菜は、全身に鳥肌が立つのを感じた。


無我夢中で盾を発動させたのはいいけれど……このあと、どうしていいかわからない。


ひざががくがくと震え、涙が出そうになる。


「へえ……お前がしてんのか、これ」


「…………」


「精霊の加護を持った人間の女か……珍しい。
しかもうまそうじゃないか」


カフカが剣をおさめる。


その瞬間張りつめていた気持ちがゆるんだ。


盾が消滅する。


その一瞬後、カフカはシリウスのこめかみを剣の柄で殴った。


ラスを守るようにしながら、シリウスは意識を失う。


倒れた人間にはもう興味がないのか、カフカがこちらに向かってくる。


長い長い黒髪が、まるで死神のローブのように見えた。