「うらぁっ!」
敵の背後から斬りつけた颯の剣を、カフカは体を反転させ、ひらりとよけた。
流れる黒髪だけが残像のように、颯の視界に残る。
「なんだ、お前……その奇妙な格好は」
カフカは颯の特攻服を見て、眉をひそめる。
(ああやっぱり、赤い特攻服なんて、魔族から見てもおかしいのね……)
なんて思っている暇はない。
颯の変な姿に目を奪われているカフカに、今度はラスがレイピアで切りかかる。
(速い……!)
まるで一陣の風。
風に流れる金髪に、赤いものがぱっと散った。
ラスがカフカの腕を斬りつけることに、成功したのだ。
「ああん?てめえ……いい度胸じゃねえか!」
一瞬目を見開いたカフカだったが、次の瞬間には残忍に笑う。
とどめを刺そうと至近距離にいたラスの腹部に、強烈な蹴りを繰り出した。
「いやああっ、ラスぅっ!」
仁菜の悲鳴が響く。
また、何もできなかった……!
「ラス様!」
シリウスはそのムチでラスの体を優しくからめとり、自分のもとへ引き寄せる。
そのおかげで彼の体は、壁に激突せずに済んだ。
しかし……。



