ヤンキー君と異世界に行く。【完】



「そんなことはさせない!」


アレクは大斧を構え、カフカに向かっていく。


広間の中央で彼らはぶつかり、武器同士がこすれ、火花が散った。


剣と斧が絡まる。


拮抗した力を、アレクが再びはじく。


そして、カフカの首を狙い、斧を横になぎ払った。


それは仁菜には目で追うのがやっとの速さで、確実に黒い影が分断されたように見えたのだけど……。


「……ほめてやるよ。
人間のわりには速いんじゃねえ?」


ふわりと舞う黒髪。


全員がその黒づくめの姿を認めたとき。


それは、アレクがなぎ払った斧の刃の上に乗っていた。


はっとアレクが紅の隻眼を見開いたのと、仁菜がピンクの石をにぎりしめたのが同時だった。


(盾よ、アレクさんを守って!)


精霊の盾が石から飛びだし、アレクの目の前にシールドを展開する。


しかしカフカは、斧の上から飛んだかと思うと、体を空中で一回転させた。


「へぼい盾だな!」


宙に浮いたままアレクの背後に回ったカフカ。


その足が水平に弧を描き、アレクの背中にめりこんだ。


衝撃で吹き飛ばされたアレクは、壁に体をうちつけられ、動けなくなってしまった。


「アレク!」


駆け寄ろうとしたラスに、カフカの剣の切っ先が向く。


「黄金の髪の王子……お前は魔王様への献上品にしてやる」


ラスがレイピアを構えるが、その前にシリウスが両手を広げ、立ちはだかる。


「魔族などに、指一本触れさせぬ!」