ヤンキー君と異世界に行く。【完】



──ギイン!


それを受け止めたのは、アレクの大斧。


「アレク……!」


「シリウス、大丈夫か!」


アレクは力任せにカフカを剣ごと弾き飛ばすと、シリウスに言う。


「あっ、双子が逃げちまった!」


「あっ!いつの間に!」


颯の声に、ラスが反応した。


カフカを警戒するあまり、いつの間にか双子はその場からいなくなっていた。


「カミーユ、双子を追って!

あの鳥に乗ってるかもしれない」


その場合、弓を扱うカミーユしか応戦できない。


「わかりました!」


カミーユはラスの命令に従い、外へ出ていく。


その間に、カフカは態勢を立て直した。


「へえ……赤髪のおっさん、お前は見たことがあるぜ。

境界の川の近くで魔族狩りをやってやがったな?」


「……それが軍の仕事だからな」


アレクをにらむ灰色の瞳は、かすかに怒りをはらんでいるように、仁菜には見えた。


「じゃあ俺は、魔族の仕事をしなきゃな」


ぺろりと舌なめずりをして、カフカは剣を構える。


そして。


「俺の仕事は、愚かな人間どもを滅ぼすことだ!」


笑いながら叫ぶと、アレクに向かって俊足で駆け出す。