「何をしている!」


黒いムチがしなり、生き物のように剣を持った魔族の手首をとらえた。


「あん……?」


青年の姿の魔族が振り向く。


シリウスがムチを握る手に力をこめると、ぎりりと嫌な音がした。


(いやああ、敵が増えてる~!)


あっちの双子の魔族は、精霊の民で会った。


だけどあのイケメン魔族は、初めて見る。


仁菜は震える手で、颯の特攻服のすそをにぎる。


「なにって……人間を喰いに来たんだよ」


イケメン魔族がもう片方の手でムチをつかむ。


するとそれはぶつりと切れて、その場に落ちた。


「きゃー、カフカさますてきー!」


「つよーい!」


双子がきゃっきゃとはしゃぐ。


「うっせぇんだよ、双子。こいつら、お前らがやられたっていう人間たちか?」


「うっ……そうでーす……」


「はー、こんな弱そうなのに、なに苦戦してんだよ、チビども」


カフカは手袋をした手で、黄金の宝石をつかむ。


それを双子の方へ投げ渡した。


「それは……っ?」


ラスがたずねる。


「なんでもねえよ。

おい双子。人間の相手はこのカフカ様がしてやる。

お前たちはそれを魔王のところへ持っていけ」


「あ、あつっ、あつっ」


それを渡されたルカは、手のひらで焼きたての焼き芋を転がすように、宝石を転がす。