赤く染まる夜空。


燃える炎を、雲が照り返す。


「はははははははははっ!」


響くのは、邪悪な笑い声。


黒い髪にとがった耳としっぽをはやした二人の魔族は、長老の屋敷を破壊し、彼を追い詰めていた。


すでに傷を負った長老に、ふたりの孫が寄り添う。


突然の魔族の襲来に、彼らはなすすべもなかった。


集落のあちこちに火が放たれ、多くの血が流された。


「ねえ、わかった?

早くアレを渡してくれないからこういうことになったんだよ?」


「長老さん、早くアレをくれないと、まだ生きてるやつもみーんな死んじゃうよ?」


子供の姿だと思って、砂漠の民は油断した。


彼らは無邪気な残酷さをもって、全てを焼き尽くそうとしている。


「仕方がない……」


長老は自分の杖を目の前に掲げた。


そして、呪文を唱える。


すると杖が光りだし、その木の繊維が割れ、ぱくりと口を開けた。


その中に入っていたのは、黄金の宝石。


ダイヤモンド型にカットされたようなその石は、自らその内側から光を放つ。


「うひゃー、まぶしいー」


「うひゃー」

ルカとロカは黒いメガネを同時にかけ、その聖なる黄金の輝きから目を守る。


それは、邪悪なる者には毒となる光……。