「くっ……!」


ルカとロカに挟まれ、カミーユが顔をしかめる。


弓が武器の彼は、接近戦に弱い。


「とりゃっ」


ーーバキッ!


ルカの跳び蹴りを左手の弓で受けると、右半身ががら空きに。


そこを、ロカの手に集まった黒いモヤが狙う。


「危ない!」


ラスは立ち上がり、レイピア片手に疾走する。


あっという間にカミーユの近くに来たラスは、ロカに向かい、地面を蹴る。


ーーシャッ!


目にも止まらない速さでなぎ払われたレイピア。


ロカはそれをよけ、カミーユのピンチは防がれたが……


「お前、邪魔!」


ロカの黒いモヤは、ラスに向けられた。


その小さな手のひらから、邪悪な弾丸が至近距離で放たれる。


「ラス様!」


シリウスが叫び、カミーユが目をつむる。


もう間に合わないと思われたそのとき……


「……!」


ロカが、とっさにラスから身を引いた。


ーードカッ!


その体があったところに振り下ろされたのは、巨大な斧。


もう少し早ければ、間違いなくロカは真っ二つになっていた。


「……アレク!」


ラスの声が響く。


彼の前に立っていたのは、深紅の隻眼の男。


「……この泉を汚す者は、俺が許さない!」


アレクの低い声で、大気が、大地が震えた。


「…………」


さすがの双子も、アレクの迫力に息を飲む。

しかし……




「「……おじさん、嫌い!」」


二人で息を合わせ、アレクに感じたおそれをふりきるように、大声を出す。


それが、再戦の合図となった。