大きな黒い傘は私の傘をすっぽりと覆って、うまく雨を遮ってくれている。だけど傘を差し出した男性の肩が雨に打たれて、哀れなほど濡れていく。
男性の意図がわからない上に、あまりにも不憫で傘を押し戻す。
「どうして謝るんですか?」
さらに、思いきって尋ねた。
語気を強めて。
『いらない』という意味を込めていることが、嫌でもわかるだろう。
それなのに男性は困った顔をして、再び傘を差し出す。
「さっき、あなたの傘にぶつかってしまったんです。信号が青に変わって飛び出した時に……ちゃんと前を見てなかったから、ごめんなさい」
私の真上に傘を掲げて、男性は頭を下げた。
そうだったのか。
傘に受けた衝撃は突風ではなく、彼だったんだ。それで傘が吹き飛ばされて……
そっと見上げてみると、男性と目が合った。
「僕の傘を使ってください、壊した傘は後日必ず弁償させてもらいますから」
しっかりした口調と真剣に私を見つめる目から、本当に申し訳なかったと心から謝ってくれていることがわかる。
とても誠実そうな人。
何度も謝ってくれるのが、申し訳なく思えてくる。

