「……弱い、と言ったな……?」
「え……うん。」
雰囲気が がらりと変わったライネスに、何故だか不安に なる。恐る恐る彼の顔を見上げると。
(……え……。)
一瞬、哀しそうに見えた。
しかし直ぐに、その表情は消える。
「……良いだろう。俺に弱いと言った事……後悔させてやる。」
そう言うと くるりと向きを変え、部屋から出て行く。
「あ、じゃあ僕も行くね。お休み。」
男女で部屋が分かれている為、ライネスと同じ部屋であるリーは、彼を追い掛けて行ってしまう。
「あ~あ、アイカさん、言っちゃいましたね。」
リーが出て行って直ぐ、リホは くすくすと笑った。
「……弱いって言っちゃ、駄目だったの?」
「ライネスが昔 虐められていた理由は、彼が優しかったからです。」
「優しかった、から?」
「プライドが高く、只管(ひたすら)に強さを求める。龍族とは、そうゆう種族です。でも彼は優しくて、人を傷付ける事を拒む、そうゆう人でした。だからこそ、龍達は彼を受け入れられなかったんです。」
「ライネスにとって“弱い”は禁句だったって事?」
レイムの質問に、リホは頷く。
「だから強くなってくれた事は嬉しいけれど……不安です。私は、弱いけど優しい……そんな彼が、好きだったから。」


