「…………っ。」
目の前で、愛光を護るように大きく広げられた腕。広い背中。
愛光を庇い、殴られたのは。
「……ライネス……?」
先程迄 悪口を言われていた、仲間だった。
殴られた衝撃で、ライネスの顔は右を向いている。長い前髪が、その表情を隠していた。
「……これ以上、仲間を傷付ける事は許さない。」
口を開いたライネスの言葉は、今迄の無気力な感じとは違い、強い意思が籠っていた。
「愚弄したければ、俺を愚弄しろ!」
ライネスが睨むと、男達は後退る。
「な、何だよ、こいつ……勝手に吠えてろ!!」
負け惜しみのように彼等は叫ぶと、走って逃げて行った。
「……あ、の、ライネス……。」
愛光が話し掛けると、彼は くるりと振り返った。殴られた頬は、見事な迄に赤く腫れ上がっている。
ライネスは むすっとした顔で口を開く。


