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愛光達が大広間を出て行った後、大爺様は、ライネスを隣の椅子に座らせた。
「ライネス。」
「はい。」
「儂 以外の者に触れられるのは、まだ怖いか?」
長い沈黙の後、ライネスは小さく頷いた。
「そうか……あんな事が在ったんじゃ。仕方が無い。」
「大爺様……俺は、悪魔と戦いたくないのです。」
ライネスの声は、微かに震えていた。
「ライネス、昔、儂が言った事、覚えておるか?」
「はい。」
「何度も自殺未遂を繰り返す お前に、儂は言ったな。生きて、悪魔に復讐せよ、と。」
ライネスは、何も言わずに大爺様を見つめる。
「村を出て、独りで生きて……何か変わったか?」
「……何も。やはり俺は……臆病ですから。」
「そうか……魔法の方は?」
そう訊かれ、ライネスは苦笑いを浮かべる。
「全然。剣術で補っては いますが。」
「アイカ達には?」
「……まだ言ってません。」
今度は大爺様が苦笑いを浮かべる。
「もう少し打ち解けたら、言うんじゃぞ。」
「……はい。」
「アイカ達と、仲良くな。」
「努力します。」
小さく頭を下げ、ライネスは大広間を出て行った。


