「…………。」
「……この鞍ね、結構 重いんだよ? それ乗せてバランス取るのも、お客様を乗せてバランス取るのも、とっても大変なんだ。俺も、10年くらい修行したんだよ?」
「そんなに!?」
「だからウィンには、無理だよ。」
「……教えて下さって、有り難うございます。」
愛光が お礼を言うと、リーヤは嬉しそうに笑った。
そして不意に、真顔に なる。
「ねぇ、アイカちゃん。」
「何ですか?」
「この世界を……いや、2界を、宜しくね。」
「……え?」
見れば、リーヤの琥珀色の瞳には、哀しげな光が宿っていた。
「俺さ、この世界が大好きなんだ。でもね、恥ずかしい話、ウィンよりも弱い。此処を護りたくてもね、弱くちゃ駄目なんだ。」
「…………。」
「だから……ウィンと……仲間と一緒に、頑張って欲しいな……何て、まだ子供の君に、こんな事 頼むなんて……故郷が恋しいだろう?」
「いいえ。もう向こうに……居場所は無いですから。私、頑張りますね。」
一瞬 脳裏に浮かんだ友達の姿を、頭を振って消し、愛光が微笑んだ時。
「着いた! あれが契約の門だぜ!」
ウィンが叫んだ。


