「気味の悪い姿じゃな。」



女神の暴言に、愛光達は呆然と する。しかしライネスは、無表情で女神を見つめた。彼は地面に座り込んだまま、腹を押さえていた。女神はリホを通して ずっと戦いを見ていたのだろうか、巫女に召喚された瞬間に、ライネスを攻撃したのだろう。



ライネスが傷口を押さえている手の間から、ぼたぼたと鮮血が溢れる。彼の口の端からも、血が一筋、顎を伝って地面に落ちた。しかし、ライネスの表情を見て、愛光は愕然と する。



自分を傷付けた相手なのに、たった今、彼女によって自分の存在を否定されたのに。



ライネスは、全てが終わったかのような、安らかな顔を していた。



「……待っていました、女神よ。」



ライネスの囁き声は、今迄 聴いた事が無いくらい、歳相応の響きに聞こえた。



「其方に待たれていたとは心外だな。」



対する女神は ふんと鼻を鳴らすと、今度は自分を召喚したリホに目を向けた。



「巫女。其方は、修復の方法を訊く為に私を召喚したのだろう?」


「はい。」


「修復って?」



頷いたリホにウィンが訊くと、彼女は口を開いた。



「本来 空界に来る筈の無い悪魔が2界を襲っているのは、10年前ライネスが悪魔を召喚した際、2界を護っていた結界の一部が綻んだ為です。」


「一部が?」


「はい、全部では在りません。その一部から、悪魔は この地へ やって来ているのです。」


「じゃあ、その一部を修復すれば……。」


「ええ、この戦いは終わります。」



アリィの言葉にリホが頷く。女神 召喚に神経を集中させていたとは言え、リホはアリィが龍の姫であると言う会話を聞いていたようだ。躊躇いもせず、アリィと会話を した。