予言と未来




「だからね、私は貴方に訊きたい。貴方は本当に“これ”を望んでるの?」



「……お前に、何が解るんだ。」



僅かな沈黙の後、ライネスはアリィを睨んだ。



「解るわ。貴方は優しい子だったじゃない。」



その言葉に、ライネスは はっと息を飲んだ。



「私は、10年間、封印されて来た。貴方が幼い時、私は今の この歳だった。貴方は、誰よりも優しかったじゃない。人と争わず、普通である事を幸せだと考え、家族と ずっと一緒に暮らす事だけを、望んでいたじゃない。」



「五月蝿いっ!」



声を上げたライネスを見て、愛光は目を見開いた。いつの間にか、彼の紅い瞳には、光彩が戻っていたのだ。



「それは優しかったからじゃない! 俺が弱かったからだ! 仕返しを恐れて、何もかもを自分の中に閉じ込めて、小さな憎悪を積み重ねて来たからこそ、それは とんでもない罪に なったんだっ!」



拳を握りしめて叫ぶライネスの顔は、苦痛に歪んでいた。



自らの、胸の痛みに。



「まだ、やり直せる筈。まだ、頑張れるわ。」



「これ以上、どう頑張れって言うんだ!」



ライネスは片手で、自身のメッシュの髪を ぐしゃぐしゃと掻き乱した。



「ずっと、頑張って来たじゃないか! それでも この世界には、苦しみしか無かった!息を するのだって苦しかった。もう、疲れたんだ。だから……。」



「だから、悪魔に加担して2界を滅ぼし……最後は死ぬつもり?」



アリィの問いに、全員が息を飲んだ。