予言と未来




次いで、巨大な激流が、ライネスとウィロアを襲った。


愛光達が慌てて声が した方を見ると、其処には1人の少女が居た。


胸迄 伸びた さらさらの蒼髪、透き通った湖のような水色をした大きな瞳。とても綺麗な顔を している。そして。


背中に生えているのは、ライネスと同じ、黄色の翼。



「……もしかして……龍族の お姫様……?」



思わず愛光が呟くと、彼女は こくりと頷いた。



「……何ですって?」



ウィロアの苦しげな声が聞こえて、愛光達は慌てて悪魔に視線を向けた。少なくとも、龍族の姫は味方の筈だから。


激流に因って吹き飛ばされたライネスとウィロアは、全身ずぶ濡れで蹲っていた。ウィロアは水を飲んでしまったのか、咽ている。



「……龍族の姫……? まさか、予言に出で来る新たな仲間!?」


「そのようです。」



龍族の姫は、他人事のように頷いた。その光景を、ライネスは息を飲んで見守っている。彼は、自分以外にも生き残りが居る事を、知らなかったのだろう。龍族の姫の答えを聞いた瞬間、ウィロアは さっと立ち上がると、翼を広げた。



「ライネス! 私は1度ヴィル様の元へ行くわ! あんたは こいつ等の相手を!」


「……解った。」



ライネスが頷くと、ウィロアは空へ飛び立った。



「あ、待て!」



追い掛けようと したルーヴの服を、龍族の姫は掴んだ。



「それよりも、今は 此方の方が重要でしょう?」



16、7歳にしか見えない少女の大人びた口調に、ルーヴは逆らえなかった。



「さて。」



彼女は、独り残されたライネスに向き直る。



「初めまして、気高き龍の青年よ。私は龍族の姫、アリィと申します。」


「…………。」



龍族の姫が名乗ると、ライネスは ゆっくりと立ち上がった。濡れて顔に張り付く前髪の間から、光彩の無い瞳で彼女を見つめる。