「違う! 俺は……っ!」
今にも泣き出しそうな瞳。けれど、彼は泣かないのだ。
決して。
「僕達が、迎えに行かなかったからだよね、だから……。」
「違う!!」
再び声を荒げたライネスは、剣を振り上げる。
「お前の所為じゃない! お前達の所為でもない! 俺は、自分で この道を選んだんだ!」
(……全ては悪魔との間に子を創った、母さんの所為……。)
悪魔を召喚しなければ、龍族は滅びなかった。いじめられていなかったら、悪魔を召喚していなかった。弱くなかったら、いじめられなかった。母に力を封印されなければ、弱くなかった。悪魔との混血じゃなかったら、力の封印は されなかった。母が悪魔と恋を しなければ、自分が混血として生まれて来る事等 無かった。
全ては母の所為。
いや、本当は解っている。
自分が堕ちて行くのを、ライネスは人の所為に しているだけだ。
そうしなければ。
自分が何で生きているのか、本当に解らなくなるから――。
「俺は……っ。」
ライネスがリーに向かって剣を振り下ろした その刹那。
「止めなさい!」
凛と した、綺麗な声が聴こえた。


