予言と未来




「ライネスお兄ちゃん、僕を殺したいの?」



その言葉を聞いたライネスの肩が ぴくりと動き、彼は剣を頭上に振り上げたまま、動きを止めた。



「そうだよね、御免ね。」



何故か謝ると、不意にリーはライネスに接近した。



「…………っ。」



今迄 涼しげな顔を していたライネスは、驚いて目を見開いた。リーが、ライネスの着ていた服を捲ったからだ。其処から露わに なった脇腹には、血が固まり、若干 膿んでいる酷い傷が在った。



愛光達は息を飲む。



それは、1週間前、ライネスが地界に連れて行かれる前、ウィロアに付けられた傷だった。その他にも、ライネスの躰には青黒く変色した無数の痣。愛光達を裏切る前、ヴィルに傷付けられたのだろうか。リーは、戦っているライネスの身の熟しを見て、彼が傷を庇いながら戦っている事に気付いたのだろう。



「僕ね、ライネスお兄ちゃんの事、ほんとの お兄ちゃんみたいに、好きだった。」


「離せっ!」



ライネスはリーの手を振り払うが、ペガサス族の少年は、変わってしまった義兄の瞳を真っ直ぐに見つめて、話し続ける。



「好きだったから、ライネスお兄ちゃんの事、ちゃんと解ってるつもりだった。解ってるつもりだったから、お兄ちゃんが訊いて欲しくない事は、詮索しなかった。でも、違ってたんだよね。」



いつでも殺す機会は在ったのに、ライネスは いつの間にか剣を下ろし、リーを見ていた。



「こんな事に なるなら、無理矢理にでも色々 訊けば良かった。だって、こんなに酷い事 されたんでしょ? 苦しかったでしょ? それでも、そんな酷い事されたのに、僕達より そっちを選んだんでしょ?苦しかったよね、辛かったよね。お兄ちゃんの気持ち、ちゃんと聞いてあげてれば良かったんだ。」


「五月蝿いっ!!」



リーの言葉に、ライネスは怒鳴った。