ヴィルが もう片方の翼の骨も、ばきりと折った。最早 悲鳴を上げる事すら出来ないライネスの躰が、びくりと震えた。
「俺は お前を必要と している。」
ライネスに、ヴィルは囁く。
「お前が、必要なんだ。」
(……ひ、つよ……う……。)
遠のく意識の中で、その言葉が ぐるぐると回る。
何て良い響きの言葉なんだろう。
――此処に居て良いんだよ。
そう言われているようだった。
現実は、理性を打ち砕く。
この時、龍族の青年は、道を踏み外してしまった。
気付かぬ内に仲間を捨て、そして裏切り、2度と取り戻せない筈の、家族と言うものに、縋りついてしまった。
意識を手放す前に見えたのは。
明るく笑う、1人の少女だった――。


