「……ライネス。」
頭を抱えて蹲るライネスに、ヴィルが声を掛けた。それでも動かないライネスの腹を、ヴィルは蹴り上げた。
「がはっ……。」
「ライネス。考えは纏まったか? お前は、俺の息子なんだ。俺と一緒に地界で生きよう。」
「……実の息子を、傷付けるのか、お前は……。」
げほげほと咳き込みながら、ライネスは濁った瞳で、ヴィルを見上げた。その瞳には、鬱屈した暗さが広がっていた。
「お前、まだ仲間が助けてくれると思っているのか?」
「…………。」
鉄格子の鍵を開け、ヴィルはライネスに歩み寄る。
「お前は、捨てられたんだ。」
「…………っ。」
ヴィルは、横たわるライネスの傍に跪き、彼の黄色い翼を掴んだ。
「……何を……。」
言い掛けた言葉を、ライネスは飲み込んだ。ヴィルが彼の翼を、ばきりと折ったからだ。
「が……ああぁあっ!!」
翼の付け根に激痛が走り、ライネスは悲鳴を上げると、冷たい床の上で、拳を きつく握った。
「必要と、されていない。」
ヴィルの低くて落ち着いた声は、ライネスの頭に深く染み込む。
(……解ってるよ、そんな事……。)
激痛で意識が朦朧とする中、ライネスは ぼんやりと、そう思った。


