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はっと目を開けると、辺りは真っ暗だった。暫く、自分の荒い呼吸を整えて、ライネスは自分が地界に居る事を思い出した。
(……嫌な、夢だった。)
いや、夢と言うよりは、記憶と言った方が正しいか。
何気無く上を見上げて、ライネスは息を飲んだ。鉄格子の向こう側――檻の外に、ヴィルが立っていた。
「お、漸く起きたねェ。」
そう言いながら、鍵を がちゃがちゃと回し、ヴィルは鉄格子を開けた。情けない事に恐怖を感じ、ライネスは ずるずると躰を後ろへ動かす。どんっと背中が壁に当たり、気が付いた時には、ヴィルが目の前に居た。
「……あぐっ……。」
突然 傷口を蹴られて、ライネスは背を丸めて痛みを堪えた。その躰を蹴って蹴って、やがてヴィルはライネスの髪を掴んで、顔を上げさせた。
肩で息を しているライネスを見て、ヴィルは薄く笑う。
「昔の可愛い お前も虐め甲斐が在ったけどさ、今の お前を虐めんのも、すっごく楽しいよ。」
何 言ってんだ こいつ、と心の中で毒づく。
そんな彼の心情を知ってか知らずか、ヴィルはライネスの隣に座り込んだ。
「……聞け。大事な話だ。」
いつもの楽しげな声とは打って変わって真面目な声。
ライネスが そっと見上げると、ヴィルの顔は真剣そのものだった。


