「龍族の、姫?」
「龍族は、彼等だけで生きる国を持っていた。その国には皇帝と呼ばれる男が居り、彼には1人の娘が居た。10年前、龍族が悪魔と戦った際、皇帝は姫の身を案じ、この魔法石の中に封印し、儂に託した。」
「どう言う事ですか、大爺様!」
声を荒げたのは、リホだった。
「ライネスは、唯一の生き残りでは無かったと言う事ですか!? 何故それを、彼に言わなかったんですか!? 彼は、自分が生き残ってしまった事を、いつも後悔していて……っ。」
ずっと、幼馴染みとして、ライネスに寄り添っていたリホは、ライネスが感じていた孤独や苦しみを、全部と迄は言えないが、理解していたのだろう。
「確かに、2人が生き残っていたのならば、子孫を残し、龍族の滅びは回避 出来たかも知れない。しかし、先程も言ったように、儂はライネスが裏切り者であると確信していた。万が一 彼が裏切った時、悪魔に姫の存在は知られてはいかん。」
「ライネスに伝えておけば、彼は裏切らなかったかも知れないのにっ!!」
リホが両手で顔を覆って、その場に跪く。
「ちょっと待ってよ!」
其処で声を上げたのは、愛光だった。
「皆して何なのよ、ライネスが悪魔の側に もう付いてしまったような、その言い方。彼は まだ裏切ってない! ヴィルに連れて行かれただけだよ! 今 助け出せば、彼は きっと裏切らない!」
そう言った愛光の瞳には、強い光が在ったのに、仲間は皆、一様に目を逸らした。
「……アイカ、あたしは、悪魔の血が入ってる奴を、助けに行く気には ならねェよ……。」
それを聞いた愛光は、大爺様を真っ直ぐに見つめた。
「お姫様が目覚めるのは、いつですか?」
「恐らく、ライネスが裏切った時だ。」
愛光は1つ頷くと、黙って床を見つめている仲間達を、見た。
「……こんな事で崩れちゃう程、ライネスと皆の絆は、脆かったんだね。仲間って言う言葉は、欺瞞だったんだ。私は、ライネスを助けに行く。例え独りでも。」
そう言うと、愛光はライネスを助けに行く為に、地下の部屋を走り出た。


