「儂とリホが予言の一部の実現を阻止しようと したように、悪魔も又、予言を阻止しようと して来た。」
「待って下さい、1つ、良いですか?」
話し始めた大爺様の言葉を、愛光は遮った。
「どうして悪魔が、2界に伝わる予言を知っているんですか?」
「はっきりとは解っておらんが、恐らく10年前、悪魔が龍族の数名を地界へ連れて行き、実験台に した際、訊き出したと思われる。」
大爺様の言葉に納得した愛光が頷くと、彼は話を元に戻した。
「……先ず悪魔が行ったのは、予言に出で来る者を、1人でも良いから、殺す事じゃった。」
「アイカさんを契約の門へ連れて行った時に、ライネスが襲われた あれですね?」
リホの問いに、大爺様は頷く。
「それを為し得なかった悪魔は、頻繁に お主等を襲うように なった。それでも歯が立たなかった為、悪魔の中でも一流の力を持つウィロアが、お主等を襲った。」
「……大爺様は何故それを?」
あの場に居なかった大爺様は、“ウィロア”と言う敵の名すら、知らない筈だ。
「儂は村の長老だよ。神霊に愛されておるのだ。お主等の旅は、神霊が いつも教えてくれる。ウィロアの目的は、ライネスを地界へ連れて行く事だった。それは、唯 単純に、ライネスが龍族の生き残りだから、と言う訳ではない。彼等には確信が在ったのだ。ライネスが裏切り者だと言う確信が。何故だと思う?」
大爺様の問いに、答えられる者は居なかった。
「……彼の気が、邪悪だったから。」
たった1人 口を開いたのは、レイムの兄――ルーヴだった。


