リホが予言を暗唱し終わった後、大聖堂は しんと静まり返った。誰も何も言わなかった。否、言えなかった。
1番 最初に口を開いたのは、ウィンだった。
「……んだよ、それ……裏切り者……?」
掠れた その言葉に、リホは頷く。
「私と大爺様は この事を知り、考え、ある結論に至りました。」
リホの瞳は、何処迄も真っ直ぐだ。
「アイカさんが以前 仰った通り、予言は予言でしかない。皆で一緒に旅を して、硬い絆を築けば、裏切り者は現れないのではないか、と。」
「それで、旅を?」
レイムの問いに、リホは頷く。
「待ってよ、それなら、裏切り者はライネスだって言うの!?」
愛光が叫ぶように訊くと、リホは困ったように目を伏せた。
「それは……。」
「その予言だと、新しく現れる仲間は、裏切り者と同じ族の少女だって言うんじゃない! でも、龍族はライネスしか居ないでしょ!?」
「……アイカ、落ち着きなさい。」
取り乱す愛光を宥めたのは、大爺様だった。
「大爺様……?」
「皆の者、良く聞くのだ。儂は、リホにも話していない事が在る。」
村で1番 偉く、崇められている その老人は、愛光達 皆に、深く頭を下げる。
「……黙っていて、悪かった。こうなる事が決まっていたのなら、隠さず話しておくべきだった。」
大爺様が頭を上げる。彼の蒼い瞳が、皆を真っ直ぐに見つめた。
「これから話す事を、受け留めておくれ。」
大爺様の言葉に、愛光達は頷いた。


