「じゃあ、何で? 何で来るななんて言うの?」
「……怖いんだ……。」
暫し沈黙し、ライネスは答えた。
「怖い? 何が?」
「……人が。生きている人、周りに居る人、全てが。」
「何で怖いの?」
そう訊くと、ライネスは紅い瞳で愛光を見つめた。
「……10年前、悪魔が龍族を滅ぼして、生き残った俺は、地界に連れて行かれた……。」
リホから そんなような事を聞いたような気がして、愛光は頷いた。
「……其処で……実験台だと言われた。」
「実験台?」
「“生き残った龍族を実験台に する事で、最早 滅びゆく龍族の強さが解る。これから倒すべき空界の奴等の強さが解る。”
そう言われて、思い出したくもないような、酷い事を、沢山された……。」
俯いているライネスの表情は、長い前髪に隠されて窺えない。
「……だから、怖いんだ。全ての人が、俺を傷付けようとしている、殺そうとしている。
そんな風に感じるんだ……そんな事 無いって事くらい、解ってる……。」
愛光は、ゆっくりとライネスに近付いた。
「ねぇ、前にさ、私の事 気になるって、言ってくれたよね?」
「…………?」
唐突な愛光の質問に、ライネスが ゆっくりと顔を上げる。
「私さ……。」
言おうと思った。
「私…………。」


