(……1週間後、かぁ……。)
自室の机に頬杖を付き、窓から銀色の月を眺めながら、愛光は夕方の出来事を思い出していた。
(……異界、ねェ……。)
信じていないと言えば、嘘に なる。
元はフェニックスだと言うリホの背中には、確かに翼が生えていたし、彼女の雰囲気は、何処か此処に馴染んでいないような、不思議な感じだった。
馬鹿だと解っている。
見ず知らずの人に異界に来てくれと言われて、鵜呑みに してしまうなんて、子供っぽいと思う。
しかし、行きたいと言う自分の気持ちは、本物だった。
(……でもなぁ……。)
愛光は、寝室で寝ているであろう祖母を思い、溜め息を ついた。
両親を亡くして、祖父が亡くなり、愛光と祖母は、2人で生活している。
愛光には祖母しか、祖母には愛光しか居ない。
体調を崩している祖母を1人 置いていくなんて、出来ない。
(てか、だから簡単に信じちゃ駄目だってば。)
愛光は自分の頬を両手で ぱんっと叩き、漂っていた心を引き戻すと、教科書とノートを開いて、明日の授業の予習を始めた。


