「……天使はさ、戦う力が無いって良く言われるけど……。」
そう呟いたレイムの兄の目の前に、透明な壁が出来上がる。
「……護る力は、在るんだ。」
ウィロアの魔法と透明な壁が ぶつかり、衝撃波が出来上がる。
「……なっ!? 硬い!?」
ウィロアは驚いたように目を瞠る。
魔法の衝突により起こった土埃が消えると、愛光達の視界に、無傷の壁が見えた。
「そう簡単に壊れるもんじゃないさ。」
尚も にっこりと微笑むレイムの兄に、ウィロアは ぎりっと歯を噛み締めた。
「更に もう1つ付け加えるとね……。」
レイムの兄の顔が真剣に なり、彼はウィロアとの距離を一気に詰めた。
「戦う力が無いのは、あくまでも魔法だけの話であって……それ以外の力なら、ちゃんと在るんだ。」
「くぁっ!!」
ガキイィィンと鋭い金属音が辺りに木霊する。ウィロアの短剣と、レイムの兄の短剣が、競り合っていた。
「こうやって武術で戦う事なら出来る……雷龍さんみたいにね。」
その言葉に、ライネスが微かに息を飲む。
「……あんまり俺達を甘く見ないで欲しいな。」
そう言って にっこり笑ったレイムの兄の短剣が、ウィロアの右腕を突き刺した。


